鳥の聞き倣し
昨日は鈴木素直先生の受賞・出版記念交流パーティがあった。日本鳥類保護連盟総裁賞の受賞と、「鳥は人の心で鳴くか(みやざき・野鳥民俗誌)」(本多企画)の出版を記念しての祝賀会であった。鈴木先生とは、教職員互助会の文芸誌「しゃりんばい」の編集委員、現代詩の勉強会「未完の会」のメンバー、宮崎県民俗学会の会員など同席する機会が多く、日頃から懇意にしていただいている。そんな関係もあってか、今回の出版に関しては宮崎日々新聞に書評も書かせていただいた。
その本のなかに穆佐地区のことも出てくる。アオバズク(ふくろう科)夏鳥の俗名として、この地区では「ヨシカ、カスッペ」と呼ばれているという。その由来は不明だが、旧薩摩藩領だった関係から同じ文化圏の呼び名が伝わっているらしい。先日の穆園学習会でも高岡小学校の子どもたちが、学校の栴檀の木に営巣したアオバズクの研究を発表していた。夏の日の夕暮れ時、この辺りでもよく「ホーホー」というその鳴き声を聞くことができる。
柳田國男の「野鳥雑記」には、子どもと老人が特に鳥の鳴き声に関心を払っていたと書かれている。それも夕暮れ時や早朝、昼と夜の境目にあたる時刻に熱心に聞き入っていたという。何か神秘的な感慨を抱くのであろう。鈴木先生の本には、県内で伝えられている鳥の聞き倣し(人が鳥の鳴き声をどう聞いたか)がたくさん採録されている。天候や季節、吉兆や農作業に至るまで、鳥の鳴き声が生活の一部としてとらえられていたことがわかる。野鳥は少なくなったとはいえ、季節毎にやってくる。密閉住宅や車社会、ケータイの普及等で、今は鳥の鳴き声に耳を傾ける機会がなくなっているが、この本はそういう生活に警鐘を鳴らしている。
先の柳田の文章のなかに、聞き倣しを面白いと思ったが故に伝承してきたのだといった後、その「面白い」の語源について「人の顔がひとつの光に向かって、一斉に照らされる形を意味した」と書いている。まさに人々が朝日に向かって顔を向けている姿ではないか。面白いということは、光を共有し共感することの意味であったらしい。大きな発見であった。
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コメント
先週末が鈴木さんのお祝いの会だったとは存じませんでした。あの本は疲れた時に開くとホッとします。行きたかったなー。でも、こちらではシャンソンの会で盛り上がりました。それはさておき、「面白い」を「光の共有と共感」とする考えはまさしくおもしろい!
投稿: 風狂子 | 2005年11月15日 (火) 09時35分