初午祭
毎年2月11日に「初午祭」が、下倉地区の粟野神社で行なわれる。今年は午前10時より神事が始まった。まず社殿において、神主を筆頭に、氏子総代、公民館組織の各代表が集まり、神事が執り行われる。育成部代表は奉納用に焼酎二本を持参する。初午をやる子供たちも同席してお払いを受ける。神事は祝詞、お払い、神楽舞等が行なわれた後、境内において「お田植神楽」が奉納される。これらの神事だけで1時間近くかかる。
「お田植神楽」は牛をかたどった面と黒い衣に中に男の子がふたり入り、手綱や鞍、代掻きをつけ、前後に大人ふたりが付く。太鼓と笛が響くなかで境内を三回をまわる。牛になった子供は大きな声で「も~うっ!も~うっ!」と叫びながら、たまに尻尾をふったり、牛の真似をして面白い所作をするよう指導される。その後、氏子総代がもみを播き、集まった人々が、松の葉を苗に見立てて、田植えの仕草をしながら境内に植えていく。毎年、その方角が異なり、神主がその方向を指示する。これで一連の神事は終わるが、その後、総代ほか大人たちは社殿にあがって直会(なおらい)をする。
子供会の行事として、その後、初午回りが行なわれる。初午とは「お田植神楽」で使用した牛のお面と黒の衣を身にまとって、各家庭を回り、お賽銭を集める行事である。原則としてその年度の最上級生(6年生)の男の子がその役をするようになっているが、都合でできない場合は5年生以下でもよい。「も~うっ!も~うっ!」と叫びながら、各家庭を回る。
各家庭では庭先で待っており、やってきたら牛の口からお賽銭をいれる。牛から頭等をなでられたら、その1年は無病息災といわれている。声を大きく出さないと、地区の人達は何の行事か分からないし、準備するのに時間がかかる。お菓子や果物を準備して待っていてくれる家庭もある。
集まったお賽銭は一応氏子に預け、氏子の判断で回った子供にいくらか配分される。
本来は新年になってはじめての午(うま)の日に行なわれるが、今は2月に行なっている。全国的には稲荷信仰の祭りといわれているが、必ずしも稲荷の祭日とは限られていない。日取りも地方によって異なる。二月初午には団子など特別な食物を作り、または茶を飲まないなどという地方もあり、馬を飾って山上の神社に登り、参拝する地方もある。今は混濁してもとの形はよくわからないが、彼岸や社日などと同じく、春の農事に先がけて豊年を祈る祭りであったかと思われる。
2月11日は「建国記念の日」で祝日でもあり、この初午行事はこの建国記念と牛馬の安全祈願、五穀豊穣、無病息災などを祈願するという。古くは新春に行なわれる予祝行事の色合いもあったのではないだろうか。以前は一週間ほど公民館に泊まり込み、馬を駆り立てて行なっていたという。県内ではこの行事を残している地区は少なく、特に「お田植神楽」は稲作祈願として珍しい。
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