ジャズと秋吉敏子
久しぶりにジャズのコンサートを聴きにいった。 「富士通スペシャル 100 GOLD FINGERS PART10」と題して、6月5日宮崎芸術劇場であった。10人のジャズピアニストがそれぞれのテクニックを披露するというもの。ところがそのメンバーが凄い。
「大御所ジュニア・マンス、ケニー・バロンをはじめ、昨年日本人として初めて“米国ジャズ・マスター賞” を受賞した秋吉敏子、バップピアノのシダー・ウォルトン、リリカルなピアノ ドン・フリードマン、今や人気・実力ともにトップクラスのサイラス・チェスナットとベニー・グリーン。また、本企画節目の今回初参加となる、ホッド・オブライエン、新進気鋭にしてすでにミュージシャン仲間から絶大なる信頼のジェラルド・クレイトン、そして、ラテン音楽ファンから神とも崇められ根強いファンを持つジョアン・ドナート」(Webページ紹介記事より)
それをサポートするのは、ボブ・クランショウ(b)にグラディ・テイト(ds)。かつてLP盤でよくジャズを聞いた馴染みのアーチストたちである。ジュニア・マンスはすでに78歳。秋吉敏子も今年77歳。かつてのビ・バップの流れに関わった連中である。恐らく生身の人間に会うのはこれが最後だろう。同じ時間を共有するということだけでも最高の出来事であった。テンポの早い曲あり、リリカルなスローバラードあり、クラシックばりのテクニックあり、また、ピアノ2台での連弾やピアノデュオもあり、久しぶりにジャズピアノを堪能できた。
でも、やはりお目当ては秋吉敏子であった。観客もひときわ彼女に対する拍手が多かった。曲名はわからなかったが、東洋風のメロディにのせて、ややアップテンポの曲をソロで、2曲目はトリオでスウィングする曲をやった。「ロング・イエロー・ロード」ではないが、満州からの引き揚げ、渡米、ビッグバンドの結成など、その曲に彼女の歴史やジャズに対する姿勢などを想い重ねながら聞いた。少し疲れ気味だったのか、あるいは今の日本の状況にやりきれなさを感じているのか、どこか沈痛な雰囲気が漂っていた。ケニー・バロンの哀調を帯びたソロも印象に残った。
最後は全員交互に「A列車で行こう」を演奏したが、人種、肌の色、国籍、年齢を超えて、観客もひとつになってジャズを楽しんでいた。こんな機会が増えるといい。
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コメント
77歳、ですか。人間は、いずれ、という宿命ですが、その技能を含めすべて蓄積したものが失われる、という時がくるというのは残念なこと。
投稿: ラッキーサウンド | 2007年6月 6日 (水) 14時09分