夏祭り
粟野神社の夏祭りで、高校生の演じる獅子舞について回った。ここ数年、獅子舞を演じる高校生が減少していて、その人数確保に苦労する。半日回っても、結構いいアルバイト料(1万円前後)になるので、希望する高校生も多いのだが、部活や進学校の業者テストなどで、なかなか日程調整が難しい。祭り優先とはいかないのである。
今年も人数が揃わなくて、結局、中学3年生まで駆り出して、何とか間に合わせた。粟野神社の夏祭りは、午前中は宮水流地区、午後は下倉地区を回ることになっており、獅子舞もそれぞれの地区の高校生が演じることになっている。しかし今年はその区割りができなかった。それで祭りに参加できる両地区の高校生に全員で回ってもらうことにした。
獅子舞は地区内の辻や交差点、他地区との境界線上で舞うことになっている。それらは魔や邪が集う場所である。だからそこでお祓いをする必要があるのだ。と同時にこの時期、稲に害虫がつきやすく、虫送りの意味もあるのかもしれない。宮水流地区で6箇所、下倉地区で4箇所の辻や交差点、境で舞った。それ以外は各家庭を回り、幼子や住民の頭を噛んで悪魔払いや無病息災、家内安全などを祈願するのである。地区住民の方々は太鼓や笛の音が聞こえてくると、門口まで出て見えて、御輿や獅子舞が来るのを待っていてくれる。そしてお賽銭を口から入れてくれる。
獅子舞は黒白の対になっており、頭と尾に二人入る。舞方はまずうずくまる姿勢から、太鼓の響き、笛の音に合わせて、口をカチカチいわせながら、内側と外側に頭を持ち上げていく。それから膝を着いた状態で左右に2回づつ噛む。さらに立ち上がって左右にすり足で運びながら、頭を回転させてやはり左右に2回づつ噛むのである。いかに鬣(たてがみ)を揺らし大きく見せるか、顔が真正面を向いているか、前後の足がきれいに揃っているかが、舞の見せ方となる。
今回、興味を引かれたのは獅子舞の布地に描かれているデザインであった。緑地に白の渦巻き模様が獅子舞の布地の特徴である。全国ほぼ共通している。渦巻き模様は縄文式土器も含めて、世界各地の古い神殿や動物神のリレーフなどによく描かれている。何か霊的なあるいは超越的なエネルギーが付与されているのだろう。その模様は無意識の世界から渦を巻いてわき上がってくる力強いエネルギーのように感じられる。
祭りの始発と終着には神社の境内を3回、時計回りに回る。くるくる回るというのはやはりトランス状態になり、あの世とこの世の通路を現出させる異次元空間の創出なのかもしれない。祭りや獅子舞の意味は深く、何度立ち会っても面白い。
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