梅雨空に
例年に比べ、10日以上も遅れて一昨日、梅雨入りした。本日の午前中まで、降ったり止んだりの空模様であったが、午後からは晴れ間も覗き、夕方7時前、職場を出る頃には空一面のうろこ雲が広がっていた。
うろこ雲は秋の季語となっており、秋台風の頃、温暖前線や熱帯低気圧の接近時によくおきるらしいが、気候条件によっては年中見ることもできる。巻積雲ともいう。今日のうろこ雲は梅雨前線の通過とともにおきたのかもしれない。
うろこ雲を見ると空の広さを感じる。青をバックに、白い点々とした巻積雲が、どこまでも目の前に広がり、果てのない空をイメージするのだろう。積乱雲やすじ雲では空の広さは感じさせない。点描画のようなうろこ雲の広がりが、空というものの造影を浮き彫りにする。
そしてそのうろこ雲の美しさがなぜか心を揺さぶる。空の広がりが哀しみのようでもあり、切なさのようでもあり、寂しさのようでもある。上空は風が強いのだろう。引きちぎられ、離れ離れにされていく雲のひとつひとつに、寂寥や孤独を感じるのかもしれない。
うろこ雲の下に灯りの点き始めた街が映る。電柱や電線、信号、看板など、不況下の人の生活が広がっていく。空と雲と電線の陰影が、より一層を生きて在ることの感慨を強めてくるのだろう。丁度、夕暮れ時でもあり、少し感傷的になった。でも、刻は動いている。
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