授賞式
本日、宮日出版文化賞の受賞式が宮日会館であった。
楽しみは何より、今回、同時受賞した人たちに会える喜びであった。というのは、今回の拙著は柳田國男の椎葉訪問を問うことから始まっており、そのヒントが他の二つの著作のなかにあると思ったからである。
近代化が進むなかで西欧に目が向いていた時期、なぜ、柳田は奥日向の椎葉を訪ねたのか疑問に思っていた。
その謎は未だに解決されていないが、今回受賞した本は拙著も含めてたまたま民俗に関係する著作であり、銀鏡、西米良、椎葉と地域の営みを題材にしたものであった。
他の書物は山村での生活を人の結びつきや自然との共生から描いており、そのなかに先の柳田の椎葉訪問の意味があるように感じたのである。
僻村に住み、派手やかな都市生活とはかけ離れた地域であるが、その豊かな文化や人と自然との結びつきに人の幸せを感じさせる内容がいっぱい詰まっている。これは一体何だろうということである。
濱砂武昭さんは84歳だがその透きとおるような顔の艶に何か神々しいものを感じた。人の良い、話し好きな世話人といった風情であったが、『銀鏡神楽-日向山地の生活志』を読むと人々が自然とどう向き合い暮らしてきたかが、儀式や生活、風俗のなかに記されていた。人の謙虚さが胸に染みいってくる。
小河孝浩さんは51歳の写真家だが、10年前に故郷の西米良に帰ってきたという。そこで38組の夫婦の写真を撮って一冊にまとめられた。しかし、他所から嫁いできた妻たちが主人公なのだとそうだ。因習の残る山里で苦労も多かったはずであるが、何がその苦労を癒してくれたのか。何気ないことばや茶飲み、自然の風景であったかもしれない。
柳田の「やさしい束縛」ということばがまだ私のなかで響いている。柳田が追い求めていたものや問題意識が今回受賞した各著作間にも響き渡っているように思う。
そんな思いがあったからこそ、今回、お二方にお会いできるのが楽しみであった。名刺交換させていただいて、共通の思いを深くしたところである。これから銀鏡、西米良通いが増えるかもしれない。
昨年facebookに移行中と宣言したが、やはりブログの必要性も感じており、同時並行的に使っていこうと思う。先日の新聞記事と本日の記念写真を掲載します。